著者と同じように旅をした紀行文

著者と同じように旅をした紀行文

語り手:長松さん
聞き手:原田陽人
2026年03月11日

海士町に移住され、株式会社海士に勤められている、長松さんにお話を伺いました。

東京の古本屋で買った、新潮社の紀行シリーズ「ふるさと日本紀行」です。40年ほど前に出た本で、4人のカメラマンがそれぞれの感覚で日本各地を巡っている紀行文なんですが、これを読んだときに、ただ面白いなと思っただけじゃなくて、この通りに行ってみたいなと思ったんですよね。どこへ行くかを自分で決めて旅をするんじゃなくて、この本を設計図みたいにして、書かれている順番や感覚をなぞるように旅をするようになって。

この本を手にして旅をすると、普段の旅行とはどんなところが一番違いましたか?

一気に移動する旅じゃなくなるところですね。この本が書かれた頃は高速道路も今ほど整っていなかったので、旧道を通って、人に道を聞きながら進む旅になるんです。本に出てくる宿や店がもう無くなっていることも多くて、看板だけ残っていたり、跡地を探し回ったりすることもありますね。そうすると自然と現地の人や役場の人に話を聞くことになって、観光地を見て回るというより、その土地で生きてきた人の話に触れる機会にもなりました。

あえて自分で行き先を決めずに、本に書かれている通りに辿る旅について、どんな面白さを感じましたか?

自分の好みだけで旅をしていると、どうしても世界は狭くなっていくと思うんです。でも、この本に出てくる場所は、必ずしも自分が選ぶような場所じゃない。4人のカメラマンがそれぞれの感覚で選んだ道や土地を、そのまま信じて辿っていくと、思ってもみなかった場所に連れて行かれる感覚があります。他人の思考回路に一度身を預けてみることで、自分の世界が確実に広がっていく。その感じがすごく面白いんですよね。

旅以外でも、世界を広げるために何かしていることはありますか?

油絵を描いてみたり、ギリシャ語を勉強してみたり、言語や歴史に触れたり、いろいろやっています。世界中のことを知りたいという気持ちはずっとあるんですけど、全部の場所に行けるわけでもないので、別のやり方で世界を広げてきた感じです。そうやって集めた知識は、最初はバラバラな点でしかないんですけど、あとからふとした瞬間に線になってつながることがある。その瞬間がすごく好きなんです。

長松

長松さん

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島根県海士町で始まった「モノとカタリ」プロジェクト。 思い出のモノを通して、島に住んでいる人・訪れた人の「人生の物語」を聞きます。

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